家づくりの時に「トイレの換気扇、上と下どちらにつけますか?」と聞かれたらどちらを選びますか?
普通、トイレの換気扇は上に付いていますが、いろいろ調べていると換気扇の位置がトイレの快適さに影響していることが分かってきました。
今回はその理由と換気扇の位置を決めるポイントをご紹介したいと思います。
トイレの換気扇の位置が何に影響するのか?
建築士に聞いたところ、トイレの換気扇の位置は以下の要素で判断しているそうです。
- 空気の流れ
- トイレの位置や構造
- お手入れのしやすさ
それぞれ、深掘っていきたいと思います。
ニオイの性質から換気扇の位置を考える
上に換気扇があると「くさいニオイ」が顔を通る問題
SNSを見ていると「換気扇が上にあると下にあるくさいニオイが顔を通る」という話題を見かけることがあります。
確かに一理あります。それなら単純に換気扇を下にしたら良いのでは?と思ってしまいますが、これがそう単純な話でもないようなのです。
「ニオイ」は上にたまるか?下にたまるか?
「くさいニオイ」は上と下どちらにたまる性質があるのでしょうか?調べてみました。
空気より軽い臭気は上昇し,重い臭気は下流します。ただし,人の動きや温度変化などでも空気は流れるため,臭気も比重に限らず空間内を循環します
日本医事新報社
これによると、臭気の比重が空気より軽いかがカギということです。臭気の比重は以下のとおり。
■臭気(くさいニオイの成分である)と空気比重
物質名(臭気) | 空気比重 | ニオイの例 |
---|---|---|
アンモニア | 0.59 | 尿 |
メチルメルカプタン | 1.66 | 腐ったたまねぎ |
硫化水素 | 1.18 | 腐ったたまご |
インドール | 4.04 | 糞便 |
スカトール | 4.52 | カビ |
このデータによると、尿のニオイ成分であるアンモニアは空気より軽いので上にあがり、糞便のニオイ成分であるインドカールは空気より重く下にいくということになります。
なんとも困ったことになりました。ニオイの成分によってたまる位置が正反対なのでこれだけで換気扇の位置が決められません。もう少し深掘る必要がありそうです。
空気の流れから換気扇の位置を考える
トイレのドアって、下のほうに若干すき間がありますよね?(無いケースもあるようです)
これは「アンダーカット」といって空気の通気口になっています。
さて、この「アンダーカット」から入ってきた空気、どこから出すべきでしょうか?
ニオイが顔を通らないようにするなら下に換気扇をつけて排気したいところですが、下に付けると天井付近の空気はいつまでたっても排気されないという問題が出てしまいます。
特に真夏のトイレは、上に温かい空気がたまると不快でしかありません。
つまり「アンダーカット」が搭載されているトイレは、下から空気を取り入れて上の換気扇で排気する前提で作られていることになります。
そうなると、やっぱり換気扇は上に取り付けた方が良いということ?という気がしてきますね。でも、もう少し待ってください。
新幹線のトイレは狭いけど臭くない
新幹線のトイレが臭くない理由がヒントになるかも知れません。
トイレ内の給気をドア上部から取り込み、
排気を床に近い壁面から出しているのです。
こちらの情報によると、新幹線のトイレは上から吸気して下から排気する構造になっているのでニオイが顔を通ることがなく新幹線のトイレがいつも快適ということです。
家のトイレも「上から吸気+下から排気」にする
それなら、家のトイレも上から吸気、下から排気にしたら良いのでは?
というわけで、早速「アンダーカット」ならぬ「アッパーカット?」のあるドアを調べてみました。しかし、なかなか理想のドアが見あたりません。
こうなったら、既製品で何とかする方法を考えてみましょう。
たとえば、このような「ランマ」や「ガラリ」をドアの上に付けて、下に換気扇を付けるという手はどうでしょうか。
もっと違和感のない方法があるようなきがします…。もし良い製品があったら教えてください!
「下から吸気+下から排気」の場合はサーキュレーターという手も
また、発想を変えて、サーキュレーターで天井にたまった空気を下に強制的に下ろす方法も考えられます。
「トイレ サーキュレーター」で探すといろいろ出てきます。照明と一体化しているなんてのもあるので検討する価値はありそうです。サーキュレータの掃除が増えるのはデメリットですが…。
トイレだけでなく家全体の空気の流れをイメージする必要がある
さて、「空気の流れ」からトイレの換気扇の位置について考えてきましたが、
高気密住宅においてはトイレの排気を考える時は家全体の空気の流れも大事になります。
たとえば、トイレの窓が開いている状態で、トイレと空間がつながっているキッチンのレンジフードを最強で稼働させたらどうなるでしょうか?
トイレのくさいニオイがキッチンの方まで流れてきてしまいます。逆に、家中の吸気口がすべて閉まっていたらどうでしょうか?トイレの換気扇はどんなに高速回転してもただ空回りしているだけになります。
トイレの空気をどこから調達するか・・・空気の流れを考えるなら、トイレだけでなく周囲の部屋の空気の流れも考える必要があります。このへんは換気の設計をしている建築士さんと検討が必要です。
排気口の位置から換気扇の位置を考える
換気扇の位置は排気口の位置にも影響するので、一緒に確認しておきたいポイント。
トイレが道路に面していたり、お隣さんと距離が近かったりすると、排気口の位置が気になってしまうかも知れません。庭でBBQをする時にお隣のトイレの排気口が目の前にあるとげんなりですもんね。
また、我が家の場合、2階のトイレは外壁に面していたので自由な位置に付けられましたが、1階のトイレは外壁に面していなかったのもあり、配管の都合で換気扇を上に付けるしかありませんでした。
構造的に換気扇を上にしか付けられない場合もあるので早めに相談しておくと安心だと思いました。
我が家の換気扇の検証結果
最終的に、我が家のトイレの換気扇は、1階は天井に2階は下に付けました。実際に違いがどれくらいあるか感じたことを報告します。
2階のトイレの換気扇は「下」・・・その結果
2階のトイレは、このとおり猫トイレを置いています。それもあり猫トイレの上に換気扇がくるようにしてもらいました。サーキュレーターなどもないので、理論上は上に空気がたまるはずです。
実際は「悪くない・・・」というのが正直な感想です。
猫がトイレした後はくさいのですが、アンモニア臭などのくさいニオイを感じないような気がします。
もっと経年劣化してきたら出てくるのかもしれません。何か変化を感じたらまたここに書きたいと思います。
1階のトイレの換気扇は「上」・・・その結果
1階のトイレは天井に着いています。
感想ですが、「あれ?におう?」と感じることがたまにあります。
ただ、少し狭かったり窓がなかったり条件が違うのもあり、換気扇の位置が影響しているかはもう少し検証が必要そうです。こちらも引き続き検証を続けたいと思います。
換気扇のお手入れのしやすさは正義
せっかく排気対策したのに換気扇がほこりだらけで性能が十分に発揮できていない!
なんてことにはなっては本末転倒。
ほったらかしになってしまいがちなトイレの換気扇ですが、定期的に掃除はしたいところ。
換気扇が手が簡単に届くところにあるということ
もし、トイレの換気扇が目の前にあったらどうでしょうか?
ほこりが常に目に入りますし、換気扇が手をのばせば届くところにあれば、サッと掃除機で吸うこともできます。天井の換気扇だとそうはいきません。
トイレは1畳に満たない狭いスペース。そんな中に便器やタンクがあり本当に窮屈なトコロです。天井の換気扇なんてなおさら。天井の掃除をしていたら、誤って便器の蓋を割ってしまったなんて悲惨な話も。
なので、掃除を考えるなら「下」換気扇は正解。「下」換気扇の效果を証明するのは難しいですが、お手入れが楽なのは実証済みです。
まとめ
今回、トイレの換気扇の位置を決めるにあたり、いろいろなポイントがあることが分かりました。
- ドアの構造(アンダーカットの存在)
- アンモニアは上に、糞便のニオイは下にたまる
- 温かい空気は上にあがる
- 上から下への空気の流れがあると臭さと感じない
- トイレに入った後は空気が撹乱する
- 家全体とトイレの空気の流れが大事
- お手入れのしやすさも大事
- 外壁の排気口の位置もチェック
ハウスメーカーもここまで考えているところは少ないかもしれません。営業マンに聞いてみてどういう反応するか聞いてみるのもいいかもしれません。フリーズしたらアウトー!ですね^^
奥が深いトイレ換気扇。みなさんの快適なトイレライフを願っています^¥^
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